単衣を着た人の足元

更新情報:2026年5月28日
単衣のお仕立てについて、より参考にしていただけるよう、胴抜き仕立ての種類と特徴を追記しました。

1. 気温上昇とともに、見直される着物の「当たり前」

最近は春でも気温が高い日が増え、「もう袷では暑いかも…」と感じることがありませんか?

以前は「単衣は6月と9月」と言われることが一般的でしたが、近年は気候の変化やライフスタイルの変化に合わせ、早めに単衣を取り入れ、秋にも長く愛用される方が増えてきました。

私自身も、オンラインレッスンで動いているうちに汗ばむ日があります。「そろそろ単衣が心地よい季節だな」と感じることもあるため、4月半ばでも体感重視で単衣に袖を通していたりします。

とはいえ、一口に単衣と言っても実はさまざま。

春向きのもの、秋向きのものなど、生地感や透け感によって着心地も印象も変わります。

また、夏の着物は「夏物」「薄物」と表現されることが多いですが、仕立て方の分類では単衣に入ります。

今回は、現代の気候に合わせた単衣の楽しみ方と、近年人気の「胴ぬき仕立て」についてご紹介します。

単衣とは?袷との違い

単衣(ひとえ)は、裏地を付けず一枚仕立てで仕立てられた着物のことです。

一般的な袷(あわせ)の着物は表地と裏地の二枚構造になっていますが、単衣は裏地がないため軽く、風を通しやすいのが特徴です。

そのため、季節の変わり目や、少し汗ばむ時期にも快適に着やすい着物として親しまれています。

ジャケットやコートなど洋服でも、秋冬物は裏地付き、春夏物は裏地なし…と、同じような仕立て分けがありますね。

袷の着物と単衣の着物の違い

最近は単衣を着る時期も変わってきています

以前は「6月と9月に着るもの」という季節感が一般的でした。(ちなみにここでの単衣は、 ”透けない、もしくは透け感の少ない単衣” を指すことが多いです)

ですが近年は、5月でも夏日になることがあり、逆に9月は真夏のような暑さが続くことも珍しくありません。

そのため現在では、

  • 気温
  • 湿度
  • 移動距離
  • 着る場所
  • 体感

などを基準に、単衣を柔軟に取り入れる方が増えています。

季節感を楽しむことも着物の魅力ですが、無理をして暑さを我慢するよりも、「心地よく楽しめること」を大切にしたいですね。

2. 一口に単衣と言っても、大きく分けて3タイプあります

単衣と聞くと「単衣ならだいたい同じでしょう」と思われがちですが、実際には季節に合わせてさまざまな種類があります。

基本的にはサラサラとした軽やかな風合いのものが好まれますが、生地感や透け感によって、向いている時期も変わってきます。

・春向きの単衣

5月頃から初夏にかけて活躍するのが、比較的透け感の少ない春向きの単衣です。

袷ほど重たくはありませんが、まだ空気が少し落ち着いている時期にも馴染みやすく、「いきなり夏物は早いかな?」という頃にちょうど良い存在です。

ややしっかりした生地感のものから夏に向かうことを意識した薄手の生地感のものもあり、春らしい軽やかさを感じながら楽しめます。

春単衣に向いた生地2種
左:正絹 花織風紬の単衣
右:綿麻 近江縮の単衣

・盛夏向きの単衣

盛夏向きの単衣は薄物とも呼ばれ、名の通り生地も薄く軽やかで、絽(ろ)や紗(しゃ)など、透け感のある織り方の生地が中心になります。

見た目にも涼しげで、風が通りやすく、真夏の暑さの中でも比較的軽やかに楽しめます。

透け感は「涼しさの演出」にもつながるため、着物ならではの季節感を感じられるのも魅力です。

素材は絹だけでなく、吸湿速乾に優れた麻や、麻×木綿などが活躍します。

夏の薄物2種 絽と紗
左:ポリエステル 絽
右:正絹 紗
夏の薄物 紗と生紬
左:正絹 西陣紋紗
右:生紬

・秋向きの単衣

夏の名残がある初秋には、秋向きの単衣も活躍します。

春単衣より少し落ち着いた色味や素材感のものを選ぶことで、残暑の中でも季節の移ろいを感じられます。

「まだ暑いけれど、見た目は少し秋らしくしたい」

そんな時期の橋渡し役のような存在です。

私もまだ暑さ対策はしたいものの秋らしく装いたいと思い、焦げ茶の麻(近江縮)を愛用しています。

また、「まだ袷を着るほどでもないけれど、もう少し秋っぽさを出したい」という時は、ざっくりした生地感の単衣なども素敵ですね。

秋単衣に向いた生地2種
左:正絹 風通御召の単衣
右:麻 近江縮の単衣

3. 近年増えている「胴ぬき仕立て」とは?

以前からあったものではありますが、「胴ぬき仕立て」の着物も人気があります。

胴ぬき仕立てとは、袷のように見えながらも、名前の通り胴部分の裏地を省いて(ぬいて)軽やかに仕立てたもの。見た目は袷のようでありつつ、暑さを軽減しやすいのが特徴です。

「袷では暑い」
「でも単衣だと少し心許ない」

そんな時期にも取り入れやすく、近年の気候とも相性の良い仕立てと言えるかもしれません。特に背中はすっきりしているけれど、袖口やすそ周りは袷に見えて…と”単衣と袷の良いとこ取り”のような利点から 冬でも愛用される方がおられます。

4. 胴ぬき仕立てにもさまざまなタイプがあります

一口に胴ぬき仕立てと言っても、実は仕様はさまざまです。「これ」と決まった正式な仕立て方はなく、どの部分を省略するかは自由度が高くカスタマイズが可能です。
※下記の図では 【水色:八掛・袖口布】【薄緑色:胴裏】 を表現しています。


・胴部分のみ裏地を省いたタイプ

シンプルに背中部分の胴裏を省いた一般的な仕様。
見た目は袷に近く、暑さ軽減ときちんと感のバランスがあります。

胴抜き仕立てAタイプ

・裾まわりを残すタイプ

裾さばきや耐久性を考え、必要な部分のみ裏地を残した仕様。
実用性を重視した仕立てです。

胴ぬき仕立てBタイプ

・居敷当て付きタイプ

着た時に腰から下は袷になっている仕様。
透け防止や安心感を重視した形です。

胴ぬき仕立てCタイプ

・軽さ重視のカジュアルタイプ

とにかく軽やかさと暑さ対策を優先した仕様。
普段着で気軽に楽しみたい方にも人気があります。

胴ぬき仕立てDタイプ

ご自身の使い勝手により和裁師さんとご相談いただきながら、体感に合うベストな一着を作り上げるのも良いですね。

5. 心地よく楽しめる季節感を大切に

着物には季節ごとの美しさがあります。一方で、近年の気候は大きく変わってきています。

だからこそ、

  • 暑さ
  • 気温
  • 体感
  • 着る場所

などに合わせながら、自分にとって心地よい着方を見つけていくことも大切だなと感じています。

「まだ袷?」
「もう単衣?」

と厳密に考えすぎず、その日の気候や装いを楽しみながら、ぜひ今の時代らしい単衣を楽しんでみてください。